滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-高島支部-

高島支部9月例会「鰻の成瀬、急成長のわけ」~お金ではなく、人の幸せ、地域の未来を思うからこそ~

高島支部 例会レポート

9/18(水)18:00〜20:30
場 所:可以登楼別館
報告者:フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社 代表取締役 山本昌弘 氏 (同友会高島支部副支部長)
テーマ 「今、求められる地域の活性化」
グループ討論「あなたはなぜこの地域で経営しているのですか?」
司会:板持さん
開会挨拶:北川渉高島支部長
参加者:33名

【報告】
山本氏は新旭町で生まれ育ち、高校卒業後にイタリアへ留学。迷いの中でさまざまな経験を積んだ後、英会話教室「ECC」や清掃サービス「おそうじ本舗」を経て、2020年に「フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社」を立ち上げました。4期目を迎える今年、地元である高島市に本社を移転しました。

山本氏は「高級料理として知られるうなぎを、誰でもおなかいっぱい食べてもらいたい」という思いから「うなぎの成瀬」の事業をスタートさせ、わずか2年で250店舗、年商66億円を超える急成長を遂げました。事業の成功により、多くのメディアから注目を集めています。

山本氏の事業の特徴は、フランチャイズ業界の健全化を目指している点です。本部のみが利益を得るのではなく、加盟店もしっかりと利益を出せる仕組みづくりに取り組んでおり、情報開示を徹底しています。売上の良い日だけでなく、悪い日も包み隠さず公開することで、実態を正確に伝えています。また、加盟店の募集を行わず広告費を削減し、結果として加盟店の利益を減らさないよう努めています。さらに、厳しい状況(かつかつ状態)にある人を安易に加盟させないという方針も徹底しており、飲食業界の厳しさに対応した事業運営を心掛けています。

山本氏は飲食業界のブラック企業的な問題にも積極的に取り組んでいます。
例えば、メニューの種類を絞ることでオペレーションを簡略化し、スタッフの負担を軽減。営業時間を短縮することで、労働時間を減らし、効率的な働き方を実現しています。
昼間は主婦、夜は学生のスタッフも多く、閉店時間を早めることで安心して働ける環境を提供しています。
その結果、2年で閉店した店舗はわずか1店舗にとどまっています。

また、地方創生にも力を入れており、新たな産業を生み出すのが難しい地方で、フランチャイズビジネスは有効な手段であると考えています。
山本氏は、地域経済に貢献することを重要視しており、「ただ金儲けだけを目指していたら今の成功はなかった」と語っています。今後は、飲食業以外にもサロン事業の展開を計画しており、安曇川に1号店を開業予定です。サロン業界も難しい市場ですが、飲食業と並行して成果を上げ、唯一無二の存在になるという目標を持たれています。

フランチャイズビジネスの拡大を通じて、地域社会の活性化に挑戦し続けていくという、山本氏の熱く力強い姿勢を見せていただきました。
グループ討論では、参加者それぞれが持つ地域への想いやそこでビジネスを手掛けていることの意味や価値を交流し、社会に貢献することと事業を発展させることが私たち中小企業経営者の役割であることを深めることが出来ました。(記:橋本 翔太)

質問に答えて・補
足報告
・リスクを取るからリターンは大きい。東京でビジネスをするよりも高島で成立させる方が難しい。でも高島で成立させることが出来れば、全国どこでもやって行ける。そういう好奇心を持っています。楽しみながらやっていますから、心も体も健康です。
・成瀬を始めたときに「飲食の素人がやるのは無理だ」と多くの人から言われました。僕はそう言われれば言われるほど「成功させよう!」という気持ちがわいてきます。
・鰻屋になったのは、誰も大規模なチェーン展開をしていなかったから。当初100店舗が日本一で、すなわち世界一でした。だから「100店舗を超えて世界一になろう」と決めて始めました。成瀬が伸びたのは外部への発信力が圧倒的に強かったから。認知を高めるために20店舗の時からTVコマーシャルを打ちました。すると土用の丑の日にTVニュースで必ず成瀬を取りあげてくれました。コマーシャルの費用は掛かりますが、取材に来てもらえば充分にペイできました。
・社員教育の考え方は、その人の良いところを見て伸ばすにつきます。それぞれの良いところを結び付ける、長所評価です。苦手なことは「諦める」こと。
自分と同じ人を求めるのは間違いです。
・売上を上げられない店ほど、メニューを増やそうとして失敗します。大事なことは、今あるものでどう工夫するかと考えること。自分事で事業をやる、そういう人が伸びます。
・2年前に地元の新旭に帰って来て町が衰退していることに愕然としました。この時から「高島のために何かやってみよう」と決意しました。同友会に誘われ入会して、同世代でとても元気な経営者がいること知り、「一緒にやれる仲間がいる」と実感しました。同友会には高島で事業を成立させている、尊敬できる仲間がいます。高島市を元気にするには、教育環境をよくすることと産業を生み出すことだと思います。ここに注力したいと思っています。
お金を儲けを先におくと、経営はうまくゆかなかない。何を成し遂げたいのかという想いを前にして取り組むことが大切です。
・20歳の頃、友人と副業で興した事業を失敗して、借金を背負いました。勤め人だったので返す金がない。そこで、出勤前の朝5時から9時までコンビニでバイトをして、全額返済しました。この時はしんどかった。でも人生ここまで落ちても何とかなるという確信を得ました。この経験が今の経営にいかされています。