高島支部オープン例会が11月23日(土)18:30~21:00まで可以登楼別館にて開催され、ゲスト参加者2名を含む23名が参加しました。
同日には「街にあかりをプロジェクト」によるイルミネーションの点灯式(このイベントは(一社)滋賀同友会副代表理事の(株)七黒 代表取締役 七黒幸太郎さんが2021年に始めた小さな一歩から、地域を盛り上げようと子供から大人までを巻き込み少しずつ大きなプロジェクトとなっています)が会場玄関前のJR湖西線近江今津駅西口で行われ、共に地域を盛り上げようと、例会参加者も点灯式に参加しました。
冒頭、山本昌弘高島支部長代行より「地域づくりのイベントに合わせて祝日の土曜日にもかかわらずご参加いただき、有り難うございます。先ほどのイベントは4年前に始められ、毎年少しずつ盛り上がっています。何事も先ず行動しないと始まりません。地域づくりは私たち中小企業家の使命でもあります」と挨拶されました。
例会の報告者は山科精器(株)代表取締役社長の大日陽一郎((一社)滋賀県中小企業家同友会理事)さん。「社員が誇りをもって働ける会社づくり~人間尊重経営の第一歩は“丸投げ経営”!?」をテーマに経営体験報告をしていただき、4つのグループに分かれ自社経営でどう実践するかを話し合いました。
山科精器さんは1939年京都市山科区で創業され、大日さんで4代目となります。社長に就任した2016年は過大投資による資金繰り悪化や古株社員や労働組合との関係性で苦労し、余分な出費を削るのが先決だと、無駄を洗い出し徹底的に削除。金融機関からの圧も相当で、メインバンク主催の企業再⽣セミナーではゾンビのような目つきで参加する経営者を見て、必死のパッチで財務改善に取り組みました。ただ、同友会では経営指針を創る会に参加し、「指針経営を継続していたから今があります」とにこやかに。優秀な社員をいかすという当たり前のことが出来ていなかったと当時を振り返りました。
業績回復の兆しが見えると、次に人を生かす風土改革に着手しました。欠点を指摘しその課題を潰していく「製造業あるある」ではどうしてもネガティブな社風になりがち。また、上意下達が根付いていたために社員に主体性がなく、会議してもダンマリで時間が過ぎるのを待つばかりだったそうです。
まず、稟議規定を制定し組織の指揮系統を整え、不透明な判断基準を明確に変えました。賃金を年功序列から評価制度(年齢給+能力給)に変え、多様な働き方を受け入れました。社内に数ある委員会から外れ、会議にも出ないと宣言し、辛抱強く口を出さずに社員に任せました。そうすると、徐々に社員同士がつながり、活発な意見が出始めるようになりました。デザイナーを採用し委員会の名称も変えることで、社員からの提案が主体的にでてくるようになりました。これは、社員の心理的安全性が高まったからでもあり、大日さんがマネージメントに徹し、結果責任を引き受けるという強い意志を感じました。
社員が各委員会を通じてブランド力を高め、イノベーションに取り組みながらデザイン経営ができ、大日さんの言葉でいう「丸投げ経営」が功を奏しています。いま、社員が自社製品の開発に取り組はじめ、委員会活動が活発化し、地域貢献活動や展示会ブースの見せ方も変わり、新たな結合を⽣み出し続ける新社屋の建設など、「丸投げ経営」の威力が発揮されています。
なによりも、“⼝を出さない・信じて任せる” という信念が「丸投げ経営」の本質であり、同友会の人間尊重経営、人を生かす経営の実践そのものだと感じました。
最後に「良いと思ったことは何でもやってみることが大切。当たり馬券は落ちていない、まずは小さいことからやりましょう」とキッパリ。大日さんの報告は社員を成長させる愛に満ちておりました。(記・川原林弘康)