中小企業家同友会全国行儀会が主催し、広島県中小企業家同友会が設営を担当した第19回障害者問題全国交流会(障全交)が、2017年10月19日(木)午後1時から20日(金)の正午まで福山市の福山ニューキャッスルホテルで開催され、全国から約500名が参加しました。
滋賀県中小企業家同友会はユニバーサル委員会を中心に21名が参加。第1分科会では永井茂一(株)ピアライフ社長が「多様な人が輝ける職場を理想に掲げて~障害者雇用で見えてきた、人が生きる経営の本質~」をテーマに経営実践報告を行い、田井勝実ユニバーサル委員長が座長を務めました。
滋賀の参加者は、2019年の滋賀同友会創立40周年に合わせて開催する記念すべき第20回障害者問題全国交流会in滋賀の開催に向けて学び合うと共に、開催地としてPRを行ってまいりました。
◯第19回障全交参加者(敬称略・順不同)
№所属参加者名企業名社内役職
1 甲賀支部 中崎 ひとみ (福)共生シンフォニー 常務理事
2 東近江支部 宮川 絵理子 宮川バネ工業(株) 専務取締役
3 湖南支部 田井 勝実 滋賀ビジネスマシン(株) 代表取締役社長
4 東近江支部 小島 滋之 (福)八身福祉会 施設長
5 湖南支部 城 貴志 NPO法人滋賀県社会就労事業振興センター 常務理事兼センター長
6 東近江支部 荷宮 将義 NPO法人就労ネットワーク滋賀 常務理事
7 大津支部 寺田 俊介 (株)ドリーム 介護職
8 湖南支部 長友 朗 (福)あすこみっと 理事長
9 湖南支部 岩泉 匡洋 日本ヒューマンリソース(株) 代表取締役
10 北近江支部 川邉 和明 (株)アド・プランニング 代表取締役
11 甲賀支部 永田 義人 (福)共生シンフォニー
12 大津支部 白杉 滋朗 企業組合 ねっこの輪 代表理事
13 大津支部 遠城 孝幸 認定NPO法人 四つ葉のクローバー 代表補佐
14 大津支部 永井 茂一 (株)ピアライフ 代表取締役
15 東近江支部 蔭山 孝夫 滋賀建機(株) 会長
16 湖南支部 松下 佑太 NPO法人滋賀県社会就労事業振興センター コーディネーター
17 湖南支部 岡田 一浩 生活協同組合コープしが 人事教育チーム担当
18 大津支部 渡辺 貴幸 (株)大生産業 瀬田支店 支店長
19 員外 久田 昇道 (一社)障害者雇用資格認定機構 代表理事
20 員外 久田 淳子 (一社)障害者雇用資格認定機構
21 事務局 廣瀬 元行 滋賀県中小企業家同友会 専務理事
=第1分科会報告概要=
分科会テーマ 多様な人が輝ける職場づくりを理想に掲げて
サブテーマ 障害者雇用で見えてきた人が生きる経営の本質
報告者 永井 茂一 株式会社ピアライフ 代表取締役 滋賀同友会 副代表理事
座 長 田井 勝実 滋賀ビジネスマシン株式会社 代表取締役 滋賀同友会 理事・ユニバーサル委員長
室 長 島田 正美 島田正美社会保険労務士事務所 代表者(広島同友会)
社員30人の不動産業で、二人の身体と一人の精神障害者を雇用しています。同友会に入って、何のために経営をするのかを深め、社員が育つ会社づくりを学び、障害のある人と関わることで、人間の多様性をいかす社風が育まれ、地域の雇用そのものが私たちの使命だと考えるようになりました。そういう思いで事業に取組んだ結果として、2010年度滋賀同友会のアワード「滋賀でいちばん大切にしたい会社」に選ばれ、一昨年には滋賀県知事から障害者雇用優良事業所表彰をいただきました。
役員をして経営能力は高まったものの・・
いま社長になって28年目の56才、同友会へ入会して23年です。28才の時に滋賀へ来て、不動産業に就職。経営者とは時間とお金にゆとりのある人だと思っていましたが、バブルが崩壊し1,500万円の債務超過の会社を任され、債権者へのお詫びと再建計画の説明が最初の仕事。社員の給料を払うのにサラ金通いもしましたから、経営とはお金を稼ぐことだと思っていました。社員の採用も金頼みで、「頑張った分だけ給料アップします」「1年間の売上げ目標を半年で達成したら、あと半年は休んでもいい」とバカな約束をしたことも。給料は売上げ歩合で、営業社員同士がお客さんを取り合う有様。正しい目的を持たずに頑張ればがんばるほど、会社はおかしなところへ行っていました。
誘われて同友会に参加し出すと、すぐに役員を頼まれました。会議には資料が要ることを教わり、会員増強で会社訪問すると、わが社との違いに驚いて勉強になりました。例会の打合せに行くのも勉強。同友会で嫌々役員を引受けたことで、経営能力だけは上がりました。
社員でなく社長がダメだと気づく
社員研修に何人が参加させた時です。事務局から「永井さん、社員さんが誰も来ませんよ」と電話があるのです。翌日社員に聞くと「行ったのですがお腹が痛くなって帰りました」と。例会に連れて行ってもたいてい後ろで寝ている。「うちの社員は出来が悪い!」とつくづく思い、恥ずかしくて研修には参加できませんでした。
そんな頃、障害者雇用をしている経営者の報告を聞きました。その人は「障害のある人の個性や能力に合わせて仕事を作り、働いてもらっている」と報告されました。私はその時、社員の出来が悪いのではなくて、社員の能力を引き出せない自分の出来が悪いのだと痛感しました。
人間は働いて自ら変わる
「わが社も障害者が働ける会社にしたいなぁ」と考える一方で、「やってもらえる仕事があるだろうか」と葛藤。タイミング良く、同友会会員の共同作業所から「うちで出来る仕事ありませんか?」と頼まれ、そこから管理物件の掃除、草刈りや来客用のお菓子、名刺印刷などをお願い知ることに。ここから障害者に対するイメージが大きく変わりました。まず職場体験を重ねることで、徐々に会社へ受入れが出来るようになりました。
その頃です。お客さんから「36才で引きこもりの息子を、給料いらないから預かってくれないか」と頼まれました。面接すると、パソコンお宅で顔は真っ青。眉毛も髪の毛も生えていません。アルバイトから始めましたが、昼間に働き出すと日焼けして、眉毛も髪も生え始めるのです。働くことは本当に人を輝かせるものだと思いました。その彼は13年務めて課長になっています。
新卒採用を始めた年のこと。同友会の事務局から頼まれて、大阪のある大学生を面接しました。一緒に来た先生は、卒業式を目前にして就職先が決まらないので、何とか社会に送り出したいと必死なのですが、当の本人は面接の最中に居眠りです。聞くと70社程から不採用通知をもらっていました。「5年・10年したら君を不採用にした会社が、あいつ採用しといたら良かったなぁと言われるように成長してくれよ」と話して採用。ところが事務仕事では居眠りばかり、営業にまわすと1年間に交通事故を5回やらかす始末。そんな彼もだんだんと成長し、8年目の今では営業のトップに育ちました。
人間とは、受入れて関わってあげると自ら政調するし、信頼すれば信頼に応えてくれるものだと信じています。
働くことは恩返し
3年前、新卒で聴覚障害の女性を採用しました。
FAXで「私は耳が生まれつき聞こえませんが、面接はしていただけますか」と問合せがありました。もちろん「わが社では障害の有無で判断しません。面接いたします」と返信。ちょうど1月でした。多くの学生は就活を終え、この時期面接に来る人は半ばあきらめ顔の人が多いのですが、彼女はニコニコしてやって来ました。そして「私は耳が全く聞こえません。でも私は大学を卒業させてもらい、とても恵まれています。こんな私が就職できなければ、障害のある他の人たちの働く場が広がりません。お世話になった聾学校の先生や両親、社会の人たちに恩返しをするためにも、私は働かなければいけないのです」と言うのです。きちんと試験をしました。彼女は口の動きでこちらの言うことを理解してくれました。そして、耳が聞こえないこと以外は、他の社員と全く同じように扱うことを条件にして採用を決めました。いまではお客様に、「私は耳が聞こえませんが、顔を見てゆっくりと話して下されば解ります」というカードを示して、営業をしてくれています。
彼女を採用して、一番成長したのは直属の上司です。よく「俺の言うことを聞いてなかったのか」と部下を呵る上司がいますが、聴覚障害だとそれは通用しません。どうすれば相手に伝わるのか、理解されるのと上司は努力し成長しました。彼女からの入社条件は、会社で手話教室をすることでしたので、今でも毎日朝礼で5分間教えてくれています。そのことも、違いを受入れる社風づくりになっています。手話が言語のように使えるようになれば、もっとステキな職場になると思います。
経営者は仕事づくりと人育が仕事
中同協の鋤柄前会長から、経営者には働く場をつくることと人を育てるという仕事があると教わりました。会社は時流に乗るから大きくなるのではなく、業績の善し悪しに関係なく仕事を作って人を雇用し続けるから成長するのだと。忙しい時だけ人を採用するのは、社員を売上げ追求の道具にしているのと同じことだと。そう教わってから、わが社も業績の善し悪しは関係なく、毎年社員を10%増やすことを目標にしました。そして、障害者雇用に取組み、仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせるようにしてきました。
これからも、働きにくい人が働きやすい会社であること、私も含めて出来ないことを補い合える会社であり続けたいと思っています。
記録:廣瀬@滋賀同友会
=第19回障全交に参加して=
廣瀬元行 滋賀県中小企業家同友会 専務理事
今回の第19回障全交in広島(福山)では、2019年10月17日(木)18日(金)に開催を予定している第20回記念大会in滋賀に向けて、良い学びと確認が出来たと思います。
分科会や二日目の討論会を通じて、「障害者を取り巻く諸問題を中小企業経営者が自社の課題として自主的な自助努力で解決することをめざす」という障全交開催の思いが、人間尊重の経営を推進するという同友会運動の広がりと深化をうけて、34年の年月で広まり深まりを見せていること。地域雇用の担い手である中小企業の課題も、障害者をはじめとしながら、働き辛さを抱える地域の多様な人々の課題解決へと広がっていて、中小企業が中軸となりながらも、同じ志を持つ支援機関や学校関係者との連携を強固にすることで、課題の解決を目指していく、新たな決意と学び合いの場としての障全交へと運動が広がっていることが良く理解できました。
1)中小企業運動である同友会が始めた障全交開催の意義を歴史的に再確認し
2)同友会運動の発展と共に広がる課題と実践の深まりを踏まえ
3)地域社会の主人公としての中小企業が中心となり、課題を引受け解決を目指し地域の持続的な発展を推進する。
そんな成果をさらに確認し合える、障全交in滋賀にしたいと思います。
あと2年間、仲間を増やし(同友会の会員を増やす)、学び合い(会社見学、施設見学)、経験を広げて(例会等での実践報告)まいりましょう!