大津支部BIG例会
と き:8月29日(金)18時30分~21時
ところ:大津市ふれあいプラザ4Fホール
報告者:藤岡秀行氏 あどばんすぐるーぷ 代表取締役/広島県中小企業家同友会
テーマ:10年ビジョンを実現する~人を生かす新規事業の創出~
グループ討論テーマ 1)どんなビジョンを掲げていますか? 2)そのビジョンは発信していますか?
参加者:62人
寺田支部長挨拶「介護事業でスタートし、児童福祉、障がい福祉など福祉関係の事業を展開するだけでなく、チョコレート屋さんや給食弁当の事業所を展開されている藤岡さん。中小企業が一つの事業を展開することも大変な環境で、どのようにして事業を展開されているのか。やり方というよりも、あり方、社員と一体感のある経営をどう実現されているのか、大いに学んでいただきたい」
藤岡氏の報告からは、普段なかなか触れることのない新規事業やM&Aのリアルな実態を知ることができ、大変刺激を受けました。資料や数字だけでは見えてこない現場の課題や意思決定の背景、そして経営者としての覚悟に触れることで、机上の学びとは異なる迫力を感じました。特に、M&A後に直面した属人的な運営や文化の壁を、いかに人材と向き合いながら改革していくかという話は印象に残りました。そこには単なる効率化や合理化ではなく、「人を生かす」という視点が貫かれており、経営の本質を考えさせられました。
また、藤岡氏が例会の場で配られたチョコレートも記憶に残っています。単なるお土産以上の意味を持っており、障がい者雇用や新しい販路開拓といった背景を知ったうえで口にしたことで、事業と社会的価値が一体になったリアルな重みを実感しました。味わいとともに、その背後にある挑戦や理念を感じられたことは、資料を読むだけでは得られない体験だったと思います。
「人を生かす」という言葉についても、これまで漠然としたイメージで捉えていましたが、今回の話を通じて具体的な意味を理解することができました。人材を“資源”として数値化し「活用」するのではなく、社員と粘り強く向き合い、一人ひとりの個性や特性を理解し、お互いが人間らしく生きる場として組織全体の力へとつなげてゆく。その姿勢があるからこそ、新しい事業や改革も単なる数字の積み上げではなく、働く人や利用者にとっての「幸せ」へと結びついていくのだと感じました。
さらに心に残ったのは、理念やビジョンを現場に浸透させるための工夫です。社長の一存で方針を決めるのではなく、幹部や現場の声を拾い上げ、外部のファシリテーターまで巻き込みながら共にビジョンをつくり上げたというお話は、組織づくりの難しさと同時に、そこに真正面から向き合う経営姿勢の大切さを教えてくれました。ビジョンは単なるスローガンではなく、社員が自らの行動に結びつけられるものでなければならない。その重要性を改めて実感しました。
また、M&Aで取得した給食事業に関しても、現場のアナログな慣習や高齢化した人材構成といった課題に直面しつつ、それを「改善の余地」と捉え、デジタル化やメニュー刷新に取り組む姿勢に学びがありました。改革の手法以上に「いいよ、やろう」という合言葉で挑戦を後押しし、失敗を恐れない文化に変えていくというお話には、経営者としての覚悟がにじんでいました。
例会を通じて学んだのは、経営において重要なのは技術や手法以上に、理念とビジョンを持ち続け、それを共に働く仲間と共有しながら進めていく力だということです。どれだけ合理的な戦略を描いても、そこに人の共感がなければ実行は続かない。逆に、一人ひとりが「やってみよう」と思える環境を整えれば、大きな変化を生み出せること。その力は、「人のために誰よりも汗をかくことが、自身の成長・幸せに繋がる」という藤岡氏の生きざまであること。その実例を目の前で知ることができた貴重な経営体験報告でした。 (記 髙木 謙一郎)